昨日の昼過ぎ、こちらのイベントに参加してきました。
多様性について、異なる視点での2つのお話でした。
当日のtoggetterです。 togetter.com
お二人のお話が対のようになっていました。
多様性について持っていた視点を変えるようなお話を聞くことができて、参加してとてもよかったです。
(お二人のお話のあとは、分科会方式のディスカッションやQAの時間があったのですが、こちらのブログでは講演部分についてのみご紹介します。)
参加したきっかけ
1-2年前くらいのデブサミで、たかのあきこさんの発表スライドを見てとても心を掴まれ、お話を聞きたい、とずっと思っていました。
www.slideshare.net
また、「多様性」「ダイバーシティ」というキーワードにも、少数派から見た表面化していない視点が存在することについて、少しもやもやした気持ちを抱えていました。
このイベントのテーマは、とても聞いてみたいものでした。
たかのさんのお話
イベント開催前に投稿されていたnote note.com
たかのさんの今までの歩みの中で出会った「壁」についてのお話です。
お聞きしながら、その真摯な歩みに、涙ぐんでしまうことも。
心に残ったキーワードを並べます。
あせらなくていい、Unlearnする、観察して学び直すことが大事。
You must unlearn what you have learned.わたし自身も楽しむことがこれからの若者に生きることの楽しさを伝える第一歩
学ぶということは、たしかに選択肢を広げてくれたこと
人を事をまず観察する、わたしを知ってもらう、学んだことを捨て学び直す大切さ
受け入れる側も、新しい環境に戸惑う仲間の不安を取り除くこと、信頼して待つこと、おなじく観察し、どんな価値観を大事にしているか理解すること、あたたかく見守ることが、結局はお互いの持てる力をうまく引き出し掛け合わせていける
壁だと思っていたものは、扉かも、適度な暖簾だったと思える日が来るかも
呼び起こされた自分のこと
呼応して、自分の体験も呼び起こされました。
子育て中に、中途入社の方の苦労が見えていなかった、自分が壁になっていたというお話。この話を聞いて私が思い起こしたのは、自分が壁になっていたかもしれない、という体験でした。
こどもが保育園のとき、同じ部署にいたお子さんが2人いる女性が働いていて、一方、私はこどもが一人だけで彼女よりも少し余裕があるので時々は馬力を効かせて働くこともできました。けれど、彼女はおそらくお子さん二人の送迎があり大変で、仕事できる時間が限られてしまっていて、時々は馬力を効かせることができる私の働き方が、彼女にとって壁になっていた部分もあったのではないか、と思い起こしました。(もちろん、私も大した馬力ではなかったのだけれど)
勉強会の参加も懇親会も、次の日からのこどものことや自分の余力を考えるととても参加したい気持ちがあっても参加しづらい、という気持ち、コミュニケーションを深めようにも夜遅くまではいられない苦しさも、身に覚えのあるものでした。
そして、これは本編と全然関係ないのですが、自己開示が苦手な自分の性格について思いを巡らしたり。
30-40代の女性のエンジニアは、現時点で、少数派なのかもしれない、と思います。
これからどんどん増えていくだろう、という希望も持っています。
60代、果ては70代まで働く時代にあって、スキルもそこまで際立ったものはなく、少数派の女性で、どこまでエンジニアを続けられるのか、という漠然とした不安もあります。
一緒に働いたりするメンバーをよく観察して、大切にしている価値観を理解して信頼して待つこと、いつでも学び直す、自分のことを知ってもらう、学び続けること、たのしみながらやっていくこと。
そうやって、歩みを続けて行きたいと思いました。
川口さんのお話
イベント開催前に投稿されていたブログ記事 kohsuke.hatenadiary.com
たかのさんとは違った視点からの多様性のお話でした。
多様性の捉え方、自分に見えて他人に見えていないものはチャンスであること、多様性は自分の知らない外の世界へ向かって広げていく積極的で自発的な活動であるように受け取りました。
気になったキーワードです。
ベータテスター(切り開く人)、あとへ続く人につながっていく
見えないものを想像するのは難しい
見えていないことがあるということを認める謙虚さが多様性を進める
多様性にはいろんな軸がある、自分が少数側に立っている軸がある、自分には見えていて周りには見えていないもの
他人に見えてない物がある、ということはチャンス
多様性を大事にすることはもちろん大切だがそれだと動く人数は限られてしまうが、経済合理性を持たせることで状況をひとつ前進させるきっかけになる
多様性は、見えない物を探して、理解しようとする謙虚さ、外へ向かっていかないといけない、たゆまざる運動
お話の内容
とあるOSSプロジェクト
分業の力
- 使えない人はいない、仕事でソフトウェアを書く時、若手や新卒はできること少ないと思いがちだが、分業でいろんなことができることになる
- 設計の仕方によって、幅広い分業(学生さんが夏休みにやる、仕事の合間の副業とか)で大きなことができるということを感じることができた
- みんなでものを作るのはいいな
- リカルド「比較優位」
- ものすごく優しい考え方、多様性を支える理論的な話だった
商売を始めた
- OSSがうまくいったので、商売を始めた
- マーケティングの人たちがイベントをやろうとなった、中心になったアリッサ
- OSSコミュニティは、均質、開発者だけ
- いい物作ったらそれでいい、何のためにイベントやるの?
- マーケではイベントをすることは当然いいことだと思っている、当たり前のものを言語化するのが難しい
- コードを1行も書いていない人、アリッサをコミュニティでどう見たらいいか?
- アリッサ、大変な苦労をした
教育する機会
- アリッサに、OSSのやり方の文化を教えればいい、とだけ思っていた
- アリッサは辛抱強く頑張ってくれたが、大事な視点が抜けていた
- 学ぶのはどちら?
- システム側が学ぶ機会でもあった
- gitやPRで議論することはエンジニアには当たり前だが、それ以外の人には敷居が高い
後に続く人たち
- アリッサは、自分がここで頑張ってやっていけると証明しないと、のちに続く人が苦労するというように思ってしまっていた
- 初めてやること、「ベータテスター」と捉えて、組織の障害を見つけるのが仕事なので、とエンジニアからやっていけたらどうだっただろう?
- 後に続く人たちがいるから
- アリッサと我々が切り開いた道があった
- 最初にコミュニティがテストしてくれたから後に続くことができる
- 最初は、後に続く人がいることをイメージできていなかった
- 見えない物を想像するのは難しい
Curb Cutting効果
- 歩道と車道の間の段差
- 段差があると車椅子の人が通れないので、市や政府に働きかけて車道と歩道の間を繋ぐところをスロープにしようとした
- 車椅子の人だけでなく、スーツケース引っ張る人、ベビーカー、恩恵を被った人はその後に続くたくさんの人がいる、ロングテール効果みたいなものがある
- 運動して市に働きかけようとまでは思わないが、少し恩恵を被る人がいっぱいいる
僕に見えていなかったもの、中国の技術コミュニティ
- 中国のソフトウェア開発の規模や先進性にびっくりした
- 見えてなかっただけ
井の中の蛙、反対側
- 見えないことがあるということに気付いたら、自分で世界へ飛び出す探しにいかなければいけない、と思った
- 見えていないことがあるということを認める謙虚さが多様性を進める
- 多様性にはいろんな軸がある
- 必ず、自分が少数側に立っている軸がある
- 自分には見えていて周りには見えていないもの
- 川口さんにとっては、自分に見えて他人に見えてないものは日本の技術コミュニティ
- 他人に見えてない物がある、ということはチャンス
- 多様性への対応は経済的合理性がある
- 合理性という言葉にはユニバーサルに人を動かす力がある
- 多様性を大事にすることは大切だが、動く人数は限られる
- 経済合理性を持たせることで状況をひとつ前進するきっかけになる
- 多様性の取り組みを自分のやっている経済活動に結び付けて行って、優位性につなげる
多様性、万歳
- たかのさんの話を聞いて、何も考えていなくても申し訳ないという気持ち
- コンピュータやってる人が多数派だったことある?
- いろんないびつ、コンプレックスあったりする
- より大きなことができる
- 優しい世界へ行きたい
- 自分が少数派の軸はある
- 誰もが応援できる取り組み
- 多様性の軸を一般化して考えたらいいんじゃないか
- ソフトウェアはみんなで作るとたのしい
- 我々がかんばらないと、ソフトウェアで世の中をよくしないといけない、次の世代へ渡さないといけない
- どうやったら、組織がいろんな人たちの力を結集できるようになるのか
村上春樹のイスラエルでのスピーチ 壁と卵
- 今日本当に伝えたいことは一つだけ、我々それぞれが人間であるということ
- 一括りにされない個であること
- それぞれがか弱い卵である
- 壁はそびえるように高い
- 自分自身の存在が無二のものである
- 立ち止まって考えてみて欲しいのが、魂、色づいた卵、システムや壁は持っていない
- システムが我々を利用することを許してはいけない
旅路は続く
- 多様性は、見えない物を探して、理解しようとする謙虚さ、外へ向かっていかないといけない、たゆまざる運動だと感じている
- 多様性への視点が変わるのではないかと思ってこんなお話をした